㈱リクルート
「ホットペッパーグルメ外食総研」
上席研究員 稲垣昌宏

節約志向が高まった人は46.1%と前年比で微減
一方、「たまの贅沢」は「外食」55.2%と圧倒的支持!
外食は流行の動きも早く、お客様の嗜好も変わりやすい。そんな外食の“今”をデータから把握しようという連載です。立地、業態、ターゲットなど、店舗の特徴に加えて、お客様の動向を参考に店舗の戦略策定に役立てていただければとの想いを込めました。
今回は2024年1月に全国の男女約1万人を対象に「節約志向の実態と外食での節約行動」についてのアンケート調査を実施しましたので、その結果をご紹介します。
物価高で節約志向が高まった人は46.1%。前年比では微減
株式会社リクルートの外食市場に関する調査・研究機関「ホットペッパーグルメ外食総研」では、物価高で高まる節約志向の実態と外食での節約行動について、2年連続で消費者アンケートを実施しました。
まずは、現在の節約意識を尋ねたところ、「物価高の前から意識し、今はもっと意識している」「物価高の前は意識していないが、今は意識している」のいずれかを選択した「最近の物価高で節約志向が高まった人」は、計46.1%でした。前年同月調査(前年比)の49.4%よりはやや減りました。
また、特に節約を意識している出費を尋ねたところ、1位は「内食の費用(自炊の食材等の費用)」で45.0%、2位は「光熱・水道費」で43.3%、3位は「外食の費用」で35.0%でした(図表①)。「内食の費用」は前年比では増加し、「光熱・水道費」「外食の費用」は前年比で減少しました。
図表① 現在、特に節約を意識している出費
(全体/複数回答)

「外食」「中食」「内食」のいずれかの出費を挙げた人を集計した「食費・計」は63.3%で、前年(62.9%)に比べると微増しています。性年代別では、30 ~50代女性は「内食の費用」、50〜60代男女は「光熱・水道費」、30代以上の女性は「被服費」、20~40代女性は「日用品・消耗品の費用」「美容費」の回答割合が、他の性年代よりも高くなっています。
特に節約を意識している出費で「外食」と回答した人に、具体的な節約対象を尋ねると、節約を実行している食事の種別では「夕食」が最も割合が高く71.9%(前年比79.3%)、次いで「昼食」が51.8%(同比56.9%)となっています。前年比で節約志向が高まったのは「朝食」で22.7%(同比19.4%)でした。
「たまの贅沢」は外食で節約志向は外食にはマイナスばかりではない
これまでに実施したことがある外食時の節約方法について、1位は「インターネットやアプリ、フリーペーパーからクーポンを入手し利用」で52.6%(前年比57.2%)、2位は「スマホやカードで支払ってポイントをためる、使う」で49.9%(同比54.9%)、3位は「インターネット予約でポイントをためる、使う」で38.9%(同比41.0%)と、1~3位の順は前年と同じでした。
性年代別では、30〜40代女性で「インターネットやアプリ、フリーペーパーからクーポンを入手し利用」「スマホやカードで支払ってポイントをためる、使う」の割合が、20〜30代女性で「インターネット予約でポイントをためる、使う」の割合が、他の性年代に比べ高い結果となりました。女性の若年層で、多様な節約方法が積極的に活用されているようです。
節約の一方でたまに贅沢をする際の出費についても尋ねました。「外食」の割合が最も高く55.2%と突出し、次いで「中食」が24.8%、3番目に「娯楽・趣味・教養費」が18.5%でした(図表②)
図表② たまに贅沢をする出費
(全体/複数回答)

性年代別では、20代女性で「外食」、30〜40代女性では「中食」でたまに贅沢をする人の割合が、他の性年代より高くなっています。また、「内食」「中食」「外食」のいずれかの出費を挙げた人を集計した「食費・計」の割合も30〜40代女性は他の性年代より高く、7割超えでした。
具体的な方法としては、「回数を増やす(夕食)」が最も割合が高く37.1%、次いで「注文するものの単価を上げる(夕食)」が35.6%でした。性年代別では、30〜40代女性は「回数を増やす(昼食)」が、20〜30代女性は「回数を増やす(喫茶)」の割合が、他の性年代よりも高い傾向です。
依然、節約志向は続いていると考えられますが、外食には「たまの贅沢」という側面もありますので、悪いことばかりではないといえそうです。
■調査概要
調査方法:インターネットによる調査
調査対象:首都圏、関西圏、東海圏に住む20~69歳の男女
調査期間:2024年1月4日~15日
有効回答数:9636人(首都圏5582件、東海圏1454件、関西圏2599件、各ウエィトバック後件数)
※調査結果は、令和3年人口推計(総務省)における割付(性年代別10区分×地域別25区分=250セル)別の構成比に合わせてサンプル数を補正したウェイトバック集計を行っている。
◆著者プロフィール
いながき まさひろ
㈱リクルート ホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員。エイビーロード編集長、AB-ROAD.net編集長、エイビーロード・リサーチ・センター・センター長などを歴任し、2013年ホットペッパーグルメリサーチセンター・センター長に就任。市場調査などをベースに消費者動向から外食市場の動向を分析・予測する一方、観光に関する調査・研究、地域振興機関である「じゃらんリサーチセンター」研究員も兼務し、「食」と「観光」をテーマに各種委員会活動や地方創生に関わる活動も行っている。肉より魚を好む、自称「魚食系男子」。