2024/10/01

RETAIL-BIZ

外食の”今”が分かる!データから把握するお客様動向[連載No.86]

 ㈱リクルート
「ホットペッパーグルメ外食総研」
上席研究員 稲垣昌宏



外食店での利用経験率 セルフオーダーがここ3年で急増




外食は流行の動きも早く、お客様の嗜好も変わりやすい。そんな外食の“今”をデータから把握しようという連載です。立地、業態、ターゲットなど、店舗の特徴に加えて、お客様の動向を参考に店舗の戦略策定に役立てていただければとの思いを込めました。

今回は2024年5月に外食店の注文ツールに関する消費者アンケートを実施したので、その結果を解説していきます。


外食店でのセルフオーダー利用経験率は57.1% 21年調査(26.0%)から急増

株式会社リクルートの外食市場に関する調査・研究機関「ホットペッパーグルメ外食総研」では、3圏域在住の消費者を対象にテーブルトップオーダー(座席に設置された専用端末を操作しての注文)や、セルフオーダー(QRコードやアプリを活用して消費者自身のスマートフォンでの注文)、テイクアウト時のモバイルオーダー(自身のスマートフォンからの事前注文や決済)について、アンケート調査を実施しました。

この種のデジタルツールの中では、比較的早くから導入が進んでいたテーブルトップオーダーについては、78.9%が「利用した経験がある」という結果に。うち23.0%は「コロナ禍後に利用した」と回答し、コロナ禍後にいっそう導入が進んでいることが分かるデータとなっています。

次に、近年普及してきたセルフオーダーの利用経験を尋ねました。導入され始めてからの歴史が浅い分、テーブルトップオーダーに比べると利用経験率は低いものの、すでに過半数の57.1%が「利用した経験がある」と回答。性年代別では、若年層ほど利用経験率が高い傾向にあり、20代女性の利用経験率(80.9%)が最も高い一方で、60代女性の利用経験率(37.3%)は最も低い結果となりました。

また、圏域別では首都圏(59.9%)が最も高い利用経験率です。外食店のテイクアウト利用時に、WEBサイトやアプリを利用してのモバイルオーダーの利用経験を尋ねると、こちらも導入され始めてからの歴史が浅く、今回調査した3種類の注文方法の中では最も利用経験率が低い48.8%となりました。

今回の調査結果を、2021年に行った調査(テイクアウト時のモバイルオーダーは調査対象外)と比較すると、テーブルトップオーダーでは5.5ポイント増加。セルフオーダーについては、21年調査で26.0%であった利用経験率が、24年調査では57.1%となっており、21年調査時はおよそ4人に1人であった利用経験者が、今回調査では2人に1人になっています。


今後の利用意向はいずれも21年調査に比べ増加傾向

今後の利用意向について尋ると、「利用したい・計」がテーブルトップオーダーで72.4%、セルフオーダーで47.6%と、いずれも21年調査の数値(順に70.1%、42.7%)を上回りました(図表①)。また、テイクアウト時のモバイルオーダーは51.5%の利用意向率でした。


図表① 今後、外食店でテーブルトップオーダー、セルフオーダー、モバイルオーダーを利用したいと思うか

(全体/単一回答)


こうした注文方法が、人手不足というお店側の都合だけで進んでいるのではなく、利用者の支持・理解も進んできている実態が明らかになりました。

今後、外食店でテーブルトップオーダーやセルフオーダーを利用したい理由を尋ねたところ、「自分の都合の良いタイミングでオーダーできるから」が51.1%で最も割合が高く、2番目に「店員を都度呼ぶことに気が引けるときがあるから」で38.5%、3番目に「待ち時間によるストレスが減るから」で24.9%と続きました(図表②)。


図表② お店の満足度【期待した内容別】

(「そのお店を選んだ経緯」「お店への事前の期待」ともに「覚えていない/当てはまるものはない」以外を回答した方/単一回答)


逆に、利用したくない理由を尋ねたところ、最も選択割合が高かったのは「自分のスマートフォンに余計なアプリなどを入れたくないから」ですが17.6%と2割に届きません。他方、「利用したくない理由はない」の選択割合は54.0%で、21年調査時から10ポイント以上増加して過半数となったことが示すように、抵抗感は急速に薄らいでいるようです。

今後、外食店のテイクアウト利用時に、モバイルオーダーを利用したい理由については、「待ち時間によるストレスが減るから」が41.1%と最も割合が高く、「スマートフォン上で会計も完了して便利だから」が24.5%、「飲食全体の時間短縮が期待できるから(時間がないときに便利だから)」が20.4%と続きます。利用したくない理由では、「利用したくない理由はない」が50.0%で最も割合が高かくなりました。

急速に活用が進む注文ツール。まだ導入されていないお店であれば、この結果を参考に、導入を検討してみてはいかがでしょうか。


■調査概要

 調査方法:インターネットによる調査
 調査対象:首都圏、関西圏、東海圏に住む20〜69歳の男女
 調査期間:2024年5月31日〜6月13日
 有効回答数: 8230人(首都圏4779件、東海圏1238件、関西圏2213件、各ウェイトバック後件数)

※調査結果は、令和4年人口推計(総務省)における割付(性年代別10区分×地域別25区分=250セル)別の構成比に合わせてサンプル数を補正したウェイトバック集計を行っている。




◆著者プロフィール
いながき まさひろ

㈱リクルート ホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員。エイビーロード編集長、AB-ROAD.net編集長、エイビーロード・リサーチ・センター・センター長などを歴任し、2013年ホットペッパーグルメリサーチセンター・センター長に就任。市場調査などをベースに消費者動向から外食市場の動向を分析・予測する一方、観光に関する調査・研究、地域振興機関である「じゃらんリサーチセンター」研究員も兼務し、「食」と「観光」をテーマに各種委員会活動や地方創生に関わる活動も行っている。肉より魚を好む、自称「魚食系男子」。