㈱リクルート
「ホットペッパーグルメ外食総研」
研究員 田中直樹

「新宿」が5年連続で1位。急上昇傾向の街は「東京駅周辺」「赤坂見附」「大森・蒲田」「下北沢」は2019年以降初となるTOP20入り
外食は流行の動きも早く、お客様の嗜好も変わりやすい。そんな外食の“今”をデータから把握しようという連載です。立地、業態、ターゲットなど、店舗の特徴に加えて、お客様の動向を参考に店舗の戦略策定に役立てていただければとの思いを込めました。
株式会社リクルートの飲食に関する調査・研究機関「ホットペッパーグルメ外食総研」が行っている、「飲みたい街ランキング」について2024年度の概況をご紹介いたします。
「新宿」が5年連続で1位に
フリーペーパー「ホットペッパー」の人気企画「飲みたい街ランキング」。24年度はホットペッパーグルメ外食総研が、「シーン別飲みたい街」「実際に飲んでいる街」などにテーマを拡張して、調査を実施しました。今回は、24年9月開催の「ホットペッパーグルメ外食総研セミナー」にて発表させていただいた、「飲みたい街の総合ランキング」について解説していきます。
まず注目すべきは、5年連続で「新宿」が1位になったことです(図表①)。当調査における回答者には、その街を選んだ理由についても回答をいただいており、やはり多くの方が「立地・アクセスの利便性」について言及しています。新宿もその傾向が大いに出ているのですが、一方で「学生時代に使っていたので馴染みがある」といった、慣れ・親しみを理由にするコメントや、「YouTubeでよく見る」などといった、時流を表すコメントも多く見られました。
これはアクセスやお店の選択肢に困らないといった「利便性」に加え、古くから人気のゴールデン街や新宿三丁目、のんべえ横丁などそれぞれのエリアで特徴が立っており、観光客も多く訪れる新宿という「街そのものが持つ魅力」も影響しているのではないでしょうか。
図表① 飲みたい街ランキング

急上昇傾向は「東京駅周辺」「赤坂見附」「大森・蒲田」
ここで言う「急上昇」は、19年より順位が5ランク以上上昇、かつ23年より順位が上昇した街を指します。
これらの街も、前述の新宿と同じことが言えます。例えば、総合ランキング3位の東京駅周辺は交通の要衝地であり、新型コロナウイルス感染症の第5類感染症移行による行動制限の緩和の影響を最も受ける街です。また、「八重洲ミッドタウン」の新設などをはじめとする再開発や、丸の内側の激しい飲食店の入れ替わりによる「常に最新の飲食が体験できる街」としてのプレゼンスも確立されているように見受けられます。
総合ランキング13位の赤坂見附は、ビジネス街として「働く」街のイメージが強いですが、近年ではマンションなども建ち、住民が増えたことで「住む」街としてのイメージも加わり、街そのものの魅力がより増しています。ひとえに立地やアクセス、お店の選択肢の豊富さだけではない、再開発などをきっかけとした街の魅力アップが順位に大きく影響していそうです。
「大森・蒲田」急上昇の背景には外食市場の大きな変化も影響?
大森・蒲田の総合ランキング順位は、22年度で25位、23年度で23位ときて、今回は17位とTOP20入りを果たしています。こちらは、ホットペッパーグルメ外食総研が実施する外食市場調査で確認された、「ある変化」の影響を大いに反映しているのではないかと考えます。
同調査によると、「飲酒を伴う外食を行った業態」は和食料理店が12.5%(18年度は11.9%)、焼き肉・ステーキ・ハンバーグなどの専業店が9.5%(同8.3%)、中華料理店が7.6%(同6.5%)、ファミリーレストラン・回転すしなどが5.3%(同4.7%)、そしてアジアン料理店が2.4%(同1.9%)と、食事主体の業態の多くで増加傾向にあります。一方、居酒屋については33.8%(同35.5%)と減少傾向にあり、居酒屋業態の減少と食事業態の増加という、業態ごとの店舗数の増減だけでは言い表せない大きな変化が見られます。
これらの変化の中で、大森・蒲田は中華料理店やアジアン料理店も多く、「居酒屋以外で飲む」シーンの受け皿としての支持を集めた結果なのではないかと捉えています。
年齢とともに「銀座」の順位が上昇
20代、30代、40代、50代と年代別に総合ランキングを比較すると、「銀座」の順位が年代とともに上がる他、20代であっても7位に位置づけました(図表②)。コリドー街など若年層のニーズに合った街づくりが影響しているとともに、「グランベルスクエア」などすべての年代にとって魅力的な施設の存在が大きいと考えられます。
図表② 年代別飲みたい街ランキング

なお、特定の年代でのみTOP10入りした街は、20代の「みなとみらい」と、50代の「下北沢」でした。みなとみらいは、おしゃれな雰囲気、横浜駅や東京方面からのアクセスの良さ、コンサートやイベント、花火大会などの活気が、20代の好みに影響しているかもしれません。下北沢は音楽や演劇、アートなどの文化的な要素に満ちた街であり、古くからあるお店と新しいお店が醸し出す「親しみやすさと今の交差」が、50代の心に響いているのかもしれません。
■調査概要
調査方法:インターネットによる調査
調査対象:関東4都県(東京・神奈川・千葉・埼玉)に住み、過去1年間で1回以上の飲酒を伴う外食をしたことがある20~59歳の男女
調査期間:2024年8月9~12日
有効回答数:2858件
◆著者プロフィール
田中直樹
㈱リクルート ホットペッパーグルメ外食総研・研究員。「ホットペッパーグルメ外食総研」では、DX調査や飲食店DX事例サイト運営をメインに司り、多くのソリューション事例を収集し、社内・社外へ言語化、展開している。また、営業推進スタッフとしてナレッジマネジメントにも携わり、ソリューション営業への進化をサポートしている。飲みに行くのは専ら立ち飲みで、日常的に一人飲みも。