㈱リクルート
「ホットペッパーグルメ外食総研」
上席研究員 稲垣昌宏

コロナ禍後の満席経験者は27.9%
「事前予約」が増加し、「インターネット予約」利用者は82.0%
外食は流行の動きも早く、お客様の嗜好も変わりやすい。そんな外食の“今"をデータから把握しようという連載です。立地、業態、ターゲットなど、店舗の特徴に加えて、お客様の動向を参考に店舗の戦略策定に役立てていただければとの想いを込めました。
今回は2023年10月に全国の男女約1万人を対象に、「夕方以降の外食における飲食店の予約」についてのアンケート調査を実施しましたので、その結果をご報告致します。
コロナ禍後の夕方以降の飲食店混んでいる印象は過半数の51.9%
株式会社リクルートの外食市場に関する調査・研究機関「ホットペッパーグルメ外食総研」では、毎月実施している外食市場調査にて、コロナ禍中の夕方以降の外食で、飲食店を事前に予約する割合が高まっていたことに注目し現在の事前予約志向やその背景について調査しました。
まずは、コロナ禍後(23年5月以降)の夕方以降の飲食店について、混んでいる印象を尋ねたところ、「そういう印象がある」の回答は過半数の51.9%で、「そういう印象はない」の20.5%を大きく上回りました。
また、同じく夕方以降の食事について、満席などで飲食店に入れなかった経験を尋ねたところ、「そういう経験がある」の回答割合は27.9%でした。
夕方以降の外食時に予約をする割合を、コロナ禍前(17年3月~20年2月)、コロナ禍中(20年3月~23年4月)、コロナ禍後(23年5月以降)の時期別に尋ねたところ、コロナ禍後に予約する割合が、「コロナ禍前より増えた」人は12.5%、「コロナ禍中より増えた」人は18.8%に達し、それぞれ「コロナ禍前より減った」の10.1%、「コロナ禍中より減った」の6.3%より高くなっています(「増えた-減った」の差は順に4.4ポイント、12.5ポイント)。やはり仮説通り、夕方以降の外食時に飲食店を事前予約する割合が、コロナ禍後は、以前に比べて増加した人が多いことが分かりました。
予約内容、「クレジットカード等の決済方法を事前登録」はまだ3.7%
上記の予約率の増加について、性年代別では、他の性年代に比べ20代女性で、コロナ禍後はコロナ禍前・中と比べて増加した人が多く(「増えた-減った」の差は各15.0ポイント、15.6ポイント)なっています。若い女性の多くが利用するSNSやアプリで予約可能な飲食店が増えていることも、事前予約の浸透に一役買っている可能性があるかもしれません。
予約内容については、回答割合が最も高いのは「人数のみの予約」で81.8%、2番目は「コース料理の予約」で34.0%、3番目は「設定された時間枠の中から選んで予約」で21.8%でした(図表①)。
図表① 夕方以降の食事について、コロナ禍後(2023年5月以降)、予約したことがある内容
(夕方以降の食事について、コロナ禍後予約したことがある方/複数回答)

「設定された時間枠の中から選んで予約」は、食材の仕入れやサービスを最適化する観点で、人気店などで導入が増えている印象がありますが、コロナ禍後に夕方以降の外食を予約したことがある人の2割以上が利用していることが分かりました。
また、予約だけして飲食店に来ない、いわゆる「ノーショー」対策として検討を進める飲食店がある「クレジットカードなど決済方法を事前登録」は3.7%にとどまっています。
また、予約方法を尋ねたところ、「インターネット予約」が最も多く82.0%でした(図表②)。コロナ禍後の主流の予約方法として浸透していることが分かります。対して「電話予約」は48.0%、3番目に「SNSを使った予約」が5.8%となっています。性年代別では他の性年代に比べ、20代女性では「インターネット予約」の利用者が91.3%と特に高く、男女の50〜60代では、「電話予約」の利用者は5割以上に達しており、まだ一定の支持があるようです。
ちなみに、予約する理由については、1位は当然かもしれませんが、「混んでいて席がないと困るから」で80.4%、2位は「席が空くまで並んだり待ったりしたくないから」で57.0%、3位は「予約するとポイントがもらえるから」で25.0%となっています。
消費者の変化に対応して、今一度お店の予約利便性や特典などを考えてみるタイミングかもしれません。
図表② 夕方以降の食事について、コロナ禍後(2023年5月以降)、予約したことがある方法
(夕方以降の食事について、コロナ禍後予約したことがある方/複数回答)

■調査概要
調査方法:インターネットによる調査
調査対象:首都圏、関西圏、東海圏に住む20~69歳の男女
調査期間:2023年10月2日~12日
有効回答数:9808人(首都圏5682件、東海圏1480件、関西圏2646件、各ウエィトバック後件数)
※調査結果は、 令和3年人口推計(総務省)における割付(性年代別10区分×地域別25区分=250セル)別の構成比に合わせてサンプル数を補正したウェイトバック集計を行っている。
◆著者プロフィール
いながき まさひろ
㈱リクルート ホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員。
エイビーロード編集長、AB-ROAD.net編集長、エイビーロード・リサーチ・センター・センター長などを歴任し、2013年ホットペッパーグルメリサーチセンター・センター長に就任。市場調査などをベースに消費者動向から外食市場の動向を分析・予測する一方、観光に関する調査・研究、地域振興機関である「じゃらんリサーチセンター」研究員も兼務し、「食」と「観光」をテーマに各種委員会活動や地方創
生に関わる活動も行っている。肉より魚を好む、自称「魚食系男子」。