㈱リクルート
「ホットペッパーグルメ外食総研」
上席研究員 稲垣昌宏

1次会前の「0次会」の経験がある人は22.8%
計画性はないが、平均2,403円とあなどれない単価
外食は流行の動きも早く、お客様の嗜好も変わりやすい。そんな外食の“今”をデータから把握しようという連載です。立地、業態、ターゲットなど、店舗の特徴に加えて、お客様の動向を参考に店舗の戦略策定に役立てていただければとの想いを込めました。
今回は2023年11月に、東名阪の男女約1万人を対象に、1次会前の「0次会」の経験についてのアンケート調査を実施したので、その結果をご報告します。
17年3月以降で0次会の参加経験がある人は22.8%
株式会社リクルートの外食市場に関する調査・研究機関「ホットペッパーグルメ外食総研」では、毎月実施している外食市場調査にて「0次会」の調査を行いました。ここでの0次会は、1次会の前に別のお店で、お一人様や参加者の一部で軽く飲んだり、食べたりすることと定義しています。
17年3月以降で0次会の参加経験を尋ねたところ、「0次会をしたことがある」は22.8%でした。参加した時期別では、コロナ禍前の経験率は20.5%で、コロナ禍(10.5%)・コロナ禍後(13.2%)に比べ高い傾向となりました(図表①)。
図表① 0次会の参加経験有無/全時期(2017年3月〜現在)
(全体/単一回答)

ここ最近始まったトレンドというよりは、高齢化社会や働き方改革などを背景に、じわじわ浸透しつつある習慣といえそうです。
また、性年代別では30代男性の参加経験率が最も高く、29.0%でしたが、時期別で「コロナ禍後」に限ると20代男性が19.1%と最も高い経験率でした。
さらに、圏域別では、首都圏で経験率が24.8%に対して、関西圏では21.0%、東海圏では18.4%と、圏域による差が目立つ結果となっています。
0次会実施の理由は「時間の余裕があった」68.7%と計画性はなし
0次会を実施した理由や目的について尋ねたところ、最も割合の高かった理由・目的は「時間の余裕があった」で68.7%。あまり計画的には行われていない様子から、前段で首都圏での経験率が高かった理由として、リモートワークの浸透や、圏域の広さに由来する時間的余裕をもった移動になることなどが関係していることも考えられそうです。
他にも、「早く飲み始めたかった」(33.3%)、「1次会の前に特に親しい人との会話を楽しみたかった」(26.5%)、「飲酒前に、なにか食べ物を摂っておきたかった」(15.3%)などを理由・目的として選択する割合が比較的高い結果となりました。
性年代別では、30代男性は「早く飲み始めたかった」、20・30代女性は「1次会の前に特に親しい人との会話を楽しみたかった」の割合が、他の性年代に比べ高くなっています。
0次会の予算について尋ねたところ、平均は2,403円で、「2,000~2,500円未満」(21.6%)と「1,000~1,500円未満」(20.3%)のシェアが多くなっています(図表②)。
図表② 直近の0次会の1人当たりの費用
(コロナ禍前、コロナ禍、コロナ禍後のいずれかで「0次会を実施したことがある」と回答した人/数値回答)

性年代別では、60代男性の平均予算が最も高く3,208円、次いで60代女性が3,163円と続きます。逆に20〜30代女性は順に1,978円、1,925円と、2,000円を下回りました。
また、圏域別では、0次会参加の経験率が最も低かった東海圏の平均予算が2,671円で、他の圏域よりも高くなっています。
アフターコロナの飲酒シーンは、単に元に戻るというよりは、社会の変化に応じた新しい飲み方や集い方になり、これまでとは違う世界になっていくと考えられます。その一つの事例が、今回取り上げた0次会です。ビジネスシーンはリモートワークの定着や直行・直帰の増加など、0次会開催に有利な方向に動いていくと想定されます。早い時間帯というと、お得なセットメニューの提供が打ち手としてありますが、今後はそれを「0次会セット」「0次会プラン」といったネーミングで打ち出すのもありかもしれません。
■調査概要
調査方法:インターネットによる調査
調査対象:首都圏、 関西圏、 東海圏に住む20〜69歳の男女
調査期間:2023年12月1〜11日
有効回答数:9835人(首都圏5698件、 東海圏 1484件、 関西圏2653件、 各ウエィトバック後件数)
※調査結果は、 令和3年人口推計(総務省)における割付(性年代別10区分×地域別25区分=250セル)別の構成比に合わせてサンプル数を補正したウェイトバック集計を行っている。
◆著者プロフィール
いながき まさひろ
㈱リクルート ホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員。エイビーロード編集長、AB-ROAD.net編集長、エイビーロード・リサーチ・センター・センター長などを歴任し、2013年ホットペッパーグルメリサーチセンター・センター長に就任。市場調査などをベースに消費者動向から外食市場の動向を分析・予測する一方、観光に関する調査・研究、地域振興機関である「じゃらんリサーチセンター」研究員も兼務し、「食」と「観光」をテーマに各種委員会活動や地方創生に関わる活動も行っている。肉より魚を好む、自称「魚食系男子」。