㈱リクルート
「ホットペッパーグルメ外食総研」
上席研究員 稲垣昌宏

初めて利用する飲食店への事前期待は味、居心地、特定メニュー
外食は流行の動きも早く、お客様の嗜好も変わりやすい。そんな外食の“今”をデータから把握しようという連載です。立地、業態、ターゲットなど、店舗の特徴に加えて、お客様の動向を参考に店舗の戦略策定に役立てていただければとの思いを込めました。
今回は2024年4月に「事前の期待値と満足度・リピート意向の関係性に関する消費者アンケート」を実施しましたので、その結果を解説していきます。
20代は見栄えのするメニューを期待して利用
株式会社リクルートの外食市場に関する調査・研究機関「ホットペッパーグルメ外食総研」では、3圏域在住の消費者を対象に「初めて利用する飲食店への期待と満足度、リピート意向」についてアンケート調査を実施しましたので、その結果をご紹介します。
まず、一番最近で夕方以降に初めて利用した飲食店について、事前の期待値を尋ねました。「覚えていない/当てはまるものはない」以外を選択した回答者では、「期待していた・計」(「とても期待していた」+「やや期待していた」の割合)は84%でした。「主に自分がお店を選んだ」場合は87.7%、「自分もお店選びに関わった」場合は87.9%と、お店選びに関与していると、来店前の期待値が高くなる傾向がありました。
また、事前に期待していた内容のトップ3は、1位「味が良さそう」(69.4%)、2位「お店の雰囲気、空間、居心地が良さそう」(50.2%)、3位「特定のメニューにひかれた」(46.1%)となっています(図表①)。「価格が安いなど、コストパフォーマンスが良さそう」(45.5%)、「素材のクオリティが高そう」(44.9%)も3位とは僅差でした。
性年代別では、20代は男女とも「見栄えのするメニューにひかれた」割合が他の性年代より高い結果となりました(20代男性47.9%、20代女性43.3%)。さらに20代女性は「味が良さそう」(74.8%)、60代女性は「お店の雰囲気、空間、居心地が良さそう」(55.7%)、「素材のクオリティが高そう」(52.0%)で、他の性年代より割合が高い傾向となりました。
ちなみに、事前の期待を醸成した情報源のトップ3は、1位が「グルメサイト、口コミサイト」(26.4%)、2位が「店構えや店先のメニューなど」(22.2%)、3位が「家族・友人・知人等からの口コミ」(14.7%)となっています。
図表① お店に期待した内容
(「そのお店を選んだ経緯」「お店への事前の期待」ともに「覚えていない/当てはまるものはない」以外を回答した方/複数回答)

「期待を超える満足」が差別化の必須条件に
利用後の満足度を尋ねたところ、「事前の期待相当以上・計」(「事前の期待を超えて満足」+「事前の期待相当」の割合)は87.0%でした(図表②)。性年代別で見ると20代男性が最も高く91.7%に達し、50代女性が最も低く83.5%となっています。「事前の期待相当以上・計」はどの性年代でも8割以上に達しているため、他の飲食店との差別化においてはあまり意味のある指標とは言えないでしょう。
一方「事前の期待を超えて満足」の割合は全体では32.4%。ぜひこのレベルを目指したいところです。
利用後のリピート意向については、「リピート意向あり・計」(「すでにリピートした」+「すぐにリピートしたい」+「いつかはリピートしたい」の割合)は全体で85.0%であり、性年代別に見ても各性年代とも8割以上に達しますが、一般的な外食頻度を考えると、この範疇に入っても現実はそこまでリピートされないかもしれません。
「リピート意向が強い・計」(「すでにリピートした」+「すぐにリピートしたい」)で見ると、全体では27.0%で、性年代別では20代男性で最も高く30.2%で、20代女性で最も低く22.6%でした。同じ20代でも男女でリピート意向は大きく違っていることが分かりました。若い世代は人口減少もあって、積極的にターゲットとして設定するにはリスクを感じる飲食店経営者もいるかもしれませんが、20代男性は事前の期待が高く、満足度もリピート意向も高いことから、将来にわたって来店が期待できる可能性を秘めていることは知っておきたいところです。
満足度とリピート意向との関係性を集計すると、「リピート意向が強い・計」は、回答者全体では27.0%であるのに対し、「事前の期待を超えて満足」した場合には最も高く37.5%に達します(全体に比べプラス10.5ポイント)。一方、「事前の期待ほどではない」「事前の期待より大きく劣る」場合は順に12.9%、10.6%まで下がります(全体に比べマイナス14ポイント以上)。
これらのことから、満足度の高低はリピート意向の強さに、当然のことながら一定の影響を及ぼすことがうかがえますが、特にリピーター獲得のためには「事前の期待を超える満足」の提供が重要な条件であると言えそうです。
図表② お店の満足度【期待した内容別】
(「そのお店を選んだ経緯」「お店への事前の期待」ともに「覚えていない/当てはまるものはない」以外を回答した方/単一回答)

■調査概要
調査方法:インターネットによる調査
調査対象:全国47都道府県に住む20〜69歳の男女
調査期間:2024年4月1〜11日
有効回答数: 9606人(首都圏5565件、東海圏1450件、関西圏2591件、各ウェイトバック後件数)
※調査結果は、令和3年人口推計(総務省)における割付(性年代別10区分×地域別25区分=250セル)別の構成比に合わせてサンプル数を補正したウェイトバック集計を行っている。
◆著者プロフィール
いながき まさひろ
㈱リクルート ホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員。エイビーロード編集長、AB-ROAD.net編集長、エイビーロード・リサーチ・センター・センター長などを歴任し、2013年ホットペッパーグルメリサーチセンター・センター長に就任。市場調査などをベースに消費者動向から外食市場の動向を分析・予測する一方、観光に関する調査・研究、地域振興機関である「じゃらんリサーチセンター」研究員も兼務し、「食」と「観光」をテーマに各種委員会活動や地方創生に関わる活動も行っている。肉より魚を好む、自称「魚食系男子」。