㈱リクルート
「ホットペッパーグルメ外食総研」
上席研究員 稲垣昌宏

外食市場規模は前年度比+12.8%、コロナ禍比は-16.6%
中食市場は同-2.4%、コロナ禍比は+15.6%
外食は流行の動きも早く、お客様の嗜好も変わりやすい。そんな外食の“今”をデータから把握しようという連載です。立地、業態、ターゲットなど、店舗の特徴に加えて、お客様の動向を参考に店舗の戦略策定に役立てていただければとの思いを込めました。
株式会社リクルートの飲食に関する調査・研究機関「ホットペッパーグルメ外食総研」が行っている、夕方以降の外食・中食の実施状況調査について、2023年度の概況をご紹介いたします。
「食事主体」業態・計は18年度比マイナス8.7%「飲酒主体」業態・計は同比マイナス29.2%
ホットペッパーグルメ外食総研では、12年10月以降、毎月3圏域(首都圏、東海圏、関西圏)の約1万人を対象に、夕方以降の外食・中食について日記形式で記録し、提出をしていただく「外食市場調査」を行っています。このほど、23年度(23年4月~24年3月)の外食・中食動向がまとまりましたので、解説いたします。
まず外食市場ですが、3圏域合計で年度の延べ外食回数は12億1945万回(前年度比プラス7.3%)と推計され、外食単価の2,828円(同比プラス5.1%)をかけ合わせた外食市場規模は3兆4,482億円(同比プラス12.8%)と推計されました(図表①)。
図表① 年間の延べ外食回数、外食市場規模
<推計値>

一方で中食市場については、3圏域合計で年度の延べ中食購入回数は15億4227万回(前年度比マイナス4.2%)、購入単価の913円(同プラス1.9%)をかけた中食市場規模は1兆4,087億円(同比マイナス2.4%)と推計されました。
外食は述べ回数・市場規模とも前年度比でプラスとなっており、中食は延べ購入回数・市場規模とも前年度比がマイナスとなっており、これは2年連続となりました。ただ、単価については、外食・中食ともに引き続き上昇傾向で、物価高や値上げの影響が強く出ているともいえます
また、コロナ禍前比(18年度比)においては、外食市場規模はマイナス16.4%、中食市場規模はプラス15.6%で、前年同様外食は回復しきっていない一方、中食は生活の一部として定着した様子となっています。
外食について、さらに詳しく見ると、飲食店の業態を「食事主体(レストラン等)」「飲酒主体(居酒屋等)」「軽食主体(ファストフード等)」「その他(宴会場等)」に大別すると、「食事主体」業態では、市場規模が前年度比プラス11.1%(18年度比91.3%)、「軽食主体」業態では同プラス14.9%(同比80.3%)に対し、「飲酒主体」業態では同プラス17.5%(同比70.8%)と、前年度からの売上の回復が著しい一方で、コロナ禍前比では、「食事主体」業態や「軽食主体」業態に比べるとまだ回復途上にあることが分かります。
また、より細かい業態別の市場規模では、コロナ禍前には市場規模が最も大きかった「居酒屋(焼鳥、串焼き、串揚げ等を含む)」が21年度は「ファミリーレストラン・回転すし等」にトップの座を一時明け渡しましたが、22年度は市場規模が大きく回復し、延べ回数のシェアと市場規模のシェアで全業態中トップを奪い返し、23年度も延べ回数シェア14.4%、外食市場規模シェア19.6%と2年連続のトップシェアとなっています。
コロナ禍前と比較すると、「アジアン料理店」(18年度比プラス0.3%)が市場規模がプラスに転じた他、「中華料理店」(同マイナス2.1%)も売上がコロナ禍前に肉薄してきています。
アジアン飲み、中華飲みなど「飲酒主体」業態で飲むことが減少
コロナ禍で消費者の外食スタイルは大きく変化しました。ここ3年度で大きくスコアを落としていた飲酒機会は、前年度比プラス1.2%と2年連続で持ち直しましたが、18年度比ではまだマイナス5.0%とマイナス推移が続いています(図表②)。一方で「予約率」(事前に予約して行う外食)は30.1%(前年度比プラス1.4%)と上昇し、こちらはコロナ禍前水準を上回っています。
図表② 飲酒有無・予約有無別の延べ回数シェア(外食回数ベース)/年間の延べ外食回数、外食市場規模【業態別・3圏域計】
<推計値>

飲酒機会について、さらに詳しく見ると、「飲酒主体」業態で実施しているシェアが減り(18年度42.9%→23年度40.0%)、「食事主体」業態で実施しているシェアが上昇(18年度52.1%→23年度56.6%)しています。
大手の居酒屋チェーンは経営環境の厳しさを理由にオフィス街や繁華街の物件を、「居酒屋」以外の店舗に業態変更を行い、コロナ禍の間に店舗数が2割ほど減少したといわれています。
「食事主体」業態では、「アジアン料理店」「中華料理店」「焼肉・ステーキ・ハンバーグ等の専業店」などで飲酒機会のシェアが上昇しました。
中食が定着したように、お客様の消費行動は元に戻るわけではなく、物価高や人手不足など、経営環境も元の状況とは大きく異なります。元通りを目指すのではなく、いかに新しい価値を提供できるのかが求められています。
■調査概要
調査方法:インターネットによる調査
調査対象:首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県)、関西圏(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、滋賀県)、東海圏(愛知県、岐阜県、三重県)に住む20~69歳の男女
調査期間:2023年4月度~24年3月度
有効回答数:月平均9681件(首都圏5608件、東海圏1461件、関西圏2611件、各ウエイトバック後件数)
※調査結果は、令和3年人口推計に基づいて(性年代別10区分×地域別25区分=250セル)別の構成比に合わせてサンプル数を補正したウェイトバック集計を行っている。
◆著者プロフィール
いながき まさひろ
㈱リクルート ホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員。エイビーロード編集長、AB-ROAD.net編集長、エイビーロード・リサーチ・センター・センター長などを歴任し、2013年ホットペッパーグルメリサーチセンター・センター長に就任。市場調査などをベースに消費者動向から外食市場の動向を分析・予測する一方、観光に関する調査・研究、地域振興機関である「じゃらんリサーチセンター」研究員も兼務し、「食」と「観光」をテーマに各種委員会活動や地方創生に関わる活動も行っている。肉より魚を好む、自称「魚食系男子」。