(株)田中コンサルティング事務所 田中司朗

韓国発、日本上陸1号店のドーナツカフェ
月商1500万円の大ヒット!
◆今回の実力店長
BONTEMPS アメリカ村本店
松永 哲也 店長(44歳)
「BONTEMPS(ボンタン)アメリカ村本店」(大阪・四ツ橋)は、ワンズトライン株式会社(山内仁代表)が経営するドーナツショップである。韓国発のブランドで、アメリカ村本店は日本初上陸の1号店。グランドオープンは2023年12月で、月商1,500万円と好スタートを切っている。今月登場いただくのは、この1号店の運営を任された松永哲也店長だ。
ワンズトライン株式会社は、「元祖豚丼屋TONTON」(70店舗)を中心に、居酒屋チェーン「大衆酒場あげもんや」など、多くの業態の飲食店を経営している。本誌今月号の『繁盛店を目指すなら優良なフランチャイズに加盟しよう!』で、山内社長にお話を伺っているので、併せてお読みいただきたい。
好調の3要因
BONTEMPSは、韓国の伝統的なお菓子を元にしたねじり揚げドーナツの専門店で、韓国で大ブレイク中だ。アメリカ村本店は1階がテイクアウト販売、2階がカフェスペースとなっている。客単価はイートインが1,100円、テイクアウトは3,000円に上る。
売上好調の要因は以下の通り。
1.日本初上陸のドーナツショップ
現在、第3次ドーナツブーム。目の前で揚げる工程が見られた1次、コンビニで本格的なドーナツとコーヒーを楽しめた2次を経て、新食感のドーナツをカフェやレストランでも味わえるようになったことが新たなブームの引き金となった。その波に乗って、BONTEMPSも人気を博している。
看板商品は「ピスタチオクリーム」(480円)、「ティラミスクリーム」(480円)、「オレオチョコレート」(430円)、「ソルテッドキャラメル」(480円)。ドーナツの種類は多く、新メニューも続々と開発中。ボリューミーなサイズで、フォークとナイフで食べる。また当日生産・当日廃棄と、鮮度にもこだわっている。
2.SNS映えするドーナツ
客層は女性が8割以上。「華やかなトッピングがSNS映えするからでしょう」と松永店長。人気K-POPアイドルのイベントで配られたスイーツとして、上陸前からファンの間では有名だったという。韓流好きの女子が、アイドルの写真と一緒にドーナツを撮って拡散しているのだ。また韓国のデザイナーとコラボ製作したオリジナルパッケージ(テイクアウトボックス)もかわいらしい。「カラフルなドーナツの詰まった素敵なお土産として喜んでもらえます」とのことだ。



3.親しみのある接客でフルサービス
松永店長の方針は、笑顔いっぱいで親しみのある接客だ。「BONTEMPSはセルフサービスではなくフルサービスなので、商品提供も片付けもスタッフが行います。だからこそ、全スタッフがフレンドリーな接客を心がけ、心地よい空間づくりに努める」と、松永店長は語る。
アルバイト応募に480人!
今回の店長のお話の中で私が最も驚いたのは、オープン前のアルバイト募集に応募してきた人が480人もいたこと。さすが、話題のドーナツカフェ日本1号店だ。このうち200人と面談し、30人を採用した。
採用のポイントは以下の3点。①第一印象(笑顔、爽やかさ、素頭の良さ)、②飲食店・サービス業での仕事経験者、③シフト状況(平日と土日のバランスを図るため)。
ホールスタッフにもドーナツの製造作業を覚えてもらう。「そうすれば商品知識が増えてお客様にしっかり説明できるし、キッチンの補助作業もできるようになります。店全体として、より安定した運営が望めるからです」というのが、松永店長の考えだ。
また今後のFC展開に向けた、ドーナツ製造マニュアルやサービスマニュアルの動画も完成している。
朝礼七つのポイント
松永店長に、店舗運営上で気をつけていることを伺った。「一つ目は商品へのこだわり。全時間帯に全種類のドーナツがそろっていること、ドーナツの鮮度、美しさ、完成度にこだわっています。二つ目はクリンネスの徹底。特に2階のイートインスペースの床はホワイトで汚れが目立ちやすいので、30分〜1時間に1回は清掃します。髪の毛1本も見逃さないようにしています。そして三つ目は毎日の朝礼。スタッフからの本日の目標の発表や、天気や行事などによる売上予測は欠かさず行います。アメリカ村は音楽の街でライブハウスやクラブが多いため、売上予測が重要となります」とのこと。
以下、私からのワンポイントアドバイスとして、朝礼実施七つのポイントをまとめてみた。
①店是や経営理念の唱和、
②前日の売上状況と本日の売上目標(予測)、
③連絡事項や新商品について、
④本日のスタッフの目標発表、
⑤本日の作業割り当てについて、
⑥頑張っているスタッフのパチパチ表彰、
⑦その他、質問や意見交換(お客様の声やクレームなど)。


コーチング型店長の「ありがとう」
松田店長はスタッフ全員に対し「褒める、評価する、感謝する」の連続だという。シフトを上がるスタッフに「ありがとう、今日は目標に対してどうだった?」と常に聞く。そのとき「あまりうまくできませんでした」との言葉が返ってくると「それはなぜだと思う?」と尋ねる。するとスタッフは「ピーク前の準備が不足していたからです」と答える。これに対し店長は「では明日から事前準備を万全にね」とアドバイスする。
松田店長のような店長を「コーチング型店長」と言う。スタッフに質問して自分で考えさせ、自主的な行動を促すのだ。
最後に今後の夢を聞くと「テレビや雑誌の取材が多くプレッシャーもありますが、韓国のオーナーが大切にしてきたBONTEMPSのおいしいドーナツを、今後はFCさんと共に、日本中に広めていきたい」と語ってくれた。近い将来100店舗も夢ではなさそうな、勢いのあるBONTEMPSだ。
◆店舗情報
店舗名/BONTEMPS アメリカ村本店
所在地/大阪府大阪市中央区西心斎橋2-18-15
TEL/06-6732-8145
客席数/50席
営業時間/10:00~22:00
客単価/1500円
平均月商/1500万円
従業員数/正社員4人、PA20人

◆著者プロフィール
たなかしろう
(株)田中コンサルティング事務所代表。大手ファーストフードからステーキハウスまでの店長・SV・営業本部長を経て独立。雑誌「飲食店経営」25年常連執筆。「実力店長養成講座」(出張研修)は300社2万人実施。中国飲食経営者日本視察セミナーコーディネート実施。著書「店長の仕事」「実力店長はここが違う」(商業界)「売上5割減でも巻き返せる!これからの飲食店経営者・店長の教科書」(同友館)。田中コンサルティング事務所 ブログ累計25万人突破。
※こちらは「飲食店経営」 2024年5月号からの転載記事です