(株)田中コンサルティング事務所 田中司朗

優れたアルバイトリーダーを育て月商800万円を1,600万円に!
◆今回の実力店長
肉のよいち 名駅店
横田 大樹 統括マネジャー(34歳)
「肉のよいち」は、株式会社ACTCommunity(柳瀬雅斗代表)が経営する焼き肉チェーン。愛知県を中心に23店舗(直営3店、FC20店)を展開する成長企業だ。
経営理念は『アクトの心 感動共有業』。「ワクワクする事を忘れずに、チャレンジ(挑戦)し続ける」「人との繋がりに感謝し、共に成長し続ける」「感動は人が生きてく上で最高の成長の糧である」。
看板メニューは「大将牛タン食べ比べ」(1,639円、以下、全て税込)、「釜炊きごはん」(1合539円、2合759円)、「刺盛三種」(1,419円)。
肉のよいちでは米の味にとことんこだわっている。創業100年の老舗米屋「名将」が監修した米を使用し、米のテイスティングを行う。さらに米の水分量、香り、見た目を確かめ、精米の仕方を変え、もちろん精米したてのものを使う。鮮度を保ち、甘みや艶を最大限に引き出すためだ。これを、各テーブルに設置された釜で炊き上げる。釜炊きごはんのおいしさが、肉の味を一層引き立てるのだ。
今月は2年前に月商800万円の名駅店を、1,600万円にまで伸長させた立役者であり、FC店の教育店舗として研修指導も担当している、横田大樹統括マネージャーにお話を伺った。

好調の三つの要因
1.教育力
店舗オペレーションのレベルを上げるには、アルバイトスタッフ全体の底上げが必要。そこで責任感のあるスタッフ4人をアルバイトリーダーとして育成し、社員レベルの業務を任せた。すると彼らの責任感はさらに磨かれていった。例えばオーダーストップとなる22時直前でも、店の前のお客様に「ファーストオーダーがラストになります。すぐお入りください!」と、売上アップのため積極的に入店を促すようになったという。
2.商品力
名物である大将牛タン食べ比べは、多くのお客様を魅了する圧倒的な看板メニューだ。また「肉の階段盛りコース」(3,500円)は、人気メニューを詰め込んだコースで、インパクトのあるビジュアルが話題となっている。また「よいち満腹定食」(1,200円)、「やみつきハラミ定食」(1,600円)、「カルビ三昧定食」(1,496円)などのランチメニューも、売上アップの一翼を担っている。


3.店長の意志と信念
横田統括マネージャーは「肉のよいちをお客様から圧倒的に支持される店にする」という強い信念を持っている。「QSCの徹底力を上げる」との意思を貫き通すことで、店の信頼度を高めている。執念にも似た彼の固い意志がスタッフ全体に浸透し、売上の好調を維持させている。
横田統括マネージャーの”ちょっといい話”
●常連さんはこうして生まれる
横田統括マネージャーがランチ準備のため、外ののぼりを立てていたとき、一人の高齢男性からどんな店なのか尋ねられ、説明したことがある。その人は1週間後に来店し「店長さんが私の話を聞いてくれて、お店の説明をしてくれました。そのときの対応がとてもよくてうれしかった。ありがとう」と語り、その後も毎週名古屋への出張時に訪れる常連客となった。
●卒業した人も訪れる
3月に、大学4年生7人の送別会を行った。そのうち3人がアルバイトリーダーだった。「この店で働けて本当によかったです。勉強になりました。ありがとうございました」と、全員が感謝の言葉をたくさん述べてくれた。この店には卒業したスタッフもよく顔を出してくれるし、食事にも来てくれる。ずっと心でつながっているのだ。
●責任感の強いリーダー
ピークが続いて大変だったある週末の閉店後、女性の新人リーダーが泣いているのに気づいた。「今日は私のせいでうまく回せなかった。何が悪かったのだろう」と言う。悔しくて泣いていたのだ。責任感の強さの表れである。横田統括マネージャーは「あの状況でうまく回すのは社員でも難しい。昨年までのリーダーたちも、最初はみんな悔しい想いをしたんだよ」と励ました。
このようなリーダーが何人もいる店だからこそ、売上が向上していくのだ。「リーダーのレベルが高くなることで、オペレーションに余裕が生まれます。そうすると売上は向上していきます」と、横田統括マネージャーは語る。

大切にしているのは感謝の気持ち
横田統括マネージャーに、店舗運営で気をつけていることを伺った。それは「感謝の気持ちを大切にする」ことだという。
お客様に対しても、スタッフ同士でも、「ありがとう」という感謝の言葉が大事。感謝の気持ちを大切にして常にそれを言葉で示すから、店の空気はますます良くなる。「ありがとう」があふれる店なのである。
スタッフとのコミュニケーションで第一に挙げられるのは、月に1回の飲み会だ。深夜にもかかわらず全員参加する。焼き肉もドリンクも楽しめるし、新メニューの試食も行う。リーダーのメンバーとは仕事の話もするが、基本的にはみんなで楽しんで盛り上がるのだ。労働時間の長い人を優先して、じゃんけんで勝った人にはディズニーのペアチケットをプレゼントする。
横田統括マネージャーの褒めると叱るのバランスは3対7で、叱ることの方が多い。だが叱った後はその空気を引きずらないように配慮している。気づいたとき、その場で短くカラッと叱るし、叱った理由を論理的に説明もする。
横田統括マネージャーは「マネージャーとしては、今後店舗が増えていくので、優秀な店長や統括マネージャーを育てたい。個人としては、将来的に自分の店を持ちたい」との夢を想い描いているとのこと。今年3月は月商1,600万円を突破。売上記録更新中である。
◆店舗情報
店舗名/肉のよいち 名駅店
所在地/愛知県名古屋市中村区名駅4-23-10
TEL/052-589-9750
店舗面積/60坪
客席数/80席
営業時間/11:30~14:00、17:00~23:00
客単価/ランチ2,000円、ディナー4,700円、平均客単価1,900円
平均月商/1,500万円
従業員数/正社員4人、PA32人

◆著者プロフィール
たなかしろう
(株)田中コンサルティング事務所代表。大手ファーストフードからステーキハウスまでの店長・SV・営業本部長を経て独立。雑誌「飲食店経営」25年常連執筆。「実力店長養成講座」(出張研修)は300社2万人実施。中国飲食経営者日本視察セミナーコーディネート実施。著書「店長の仕事」「実力店長はここが違う」(商業界)「売上5割減でも巻き返せる!これからの飲食店経営者・店長の教科書」(同友館)。田中コンサルティング事務所 ブログ累計25万人突破。
※こちらは「飲食店経営」 2024年8月号からの転載記事です