2024/12/01

RETAIL-BIZ

実力店長はここが違う![連載No.288]

(株)田中コンサルティング事務所 田中司朗


どうとんぼり神座


笑顔と元気ときれいな店舗で坪売上65万円!


どうとんぼり神座 アトレ川崎店
鳥越 紫織 店長(48歳)




「どうとんぼり神座」は、株式会社理想実業(布施真之介代表)が経営するラーメンチェーンである。現在、関東・関西・海外に92店舗を展開している。経営理念は「私達は『神座』の暖簾を通し 人々に食べる喜びと安らぎの店を提供し お客様へのサービスと技の向上、味への拘りを念願し幸福で愛と希望に満ちた明るく楽しい社会づくりに貢献します」。

今月は、社内の5C評価(OSCA+衛生管理)でナンバー1の座に輝き、売上前年比も116%と大きく伸ばしている、アトレ川崎店の鳥越紫織店長にお話を伺った。



売上好調三つの要因

フレンチとラーメンの協演といわれる、独創的で比類なきおいしさが、神座のラーメンの大きな強み。あっさりしているのに、素材のうま味とコクが凝縮した深い味わいがある。

アトレ川崎店の看板メニューは「美味しいラーメン」(820円)「煮玉子ラーメン」(950円)「野菜いっぱいラーメン」(1,070円)。鳥越店長の店舗目標は「“ありがとう”(感謝)の気持ちを忘れず、笑顔でイキイキと元気よく!」である。いつも「ありがとう」があふれる店でいたいのだ。

売上好調の要因は次の通り。


1.元気な挨拶でイキイキ、キビキビ!

挨拶の声は元気いっぱいで、店の外にまで替く。立地はJR川崎駅のすぐそば。駅周辺の通行人が振り返るほど大きく、活気に満ちている。笑顔でイキイキ、キビキビと働くスタッフばかりなので、お客様から「いつも元気をもらっている」と感謝されている。


2.女性が入りやすいきれいな店

「きれいな場所(調理場)からでしかおいしい物は生まれない」というのが、創業者の言葉。その言葉通り、神座の店舗はキッチンもホールもビカピカに磨かれている。アトレ川崎店もきれいで、輝くばかりに常に磨き抜かれている。そのせいかこの店は、他の神座の店より女性客比率が高く(6割)、ふらりと来店したお客様に「今日はレディース・デーですか?」と尋ねられるほどだ。


3.チームワーク抜群

鳥越店長はキャスト(スタッフ)たちに「良いことでも悪いことでも、いつでもどんなことでもいいから私に言ってね。納得のいかないことがあれば堂々と言っていいんだよ。私はみんなのお母さんだから」と言い続けている。

常に自由に発言できることで店の空気が良くなり、チームワークもどんとん向上する。だから「ありがとう」のあふれる店になるのだ。



店長の嬉しいメモリー


熱々ラーメンを再提供

赤ちゃん連れのお客様が来店。ラーメンが提供されたときに赤ちゃんが泣き出し、やむなくお客様はいったん店の外へ出た。そのとき鳥越店長は「入り口に近い席を取っておきますね」とお客様に伝え、そのあと冷めたラーメンを下げて、熱々の新しいラーメンを提供し直した。お客様が非常に喜んでくれたので、店長もとてもうれしくなった。

携帯電話に対応するため、席を立って外に出るビジネスマンもいる。そういうときでも新しいラーメンを提供する。多くの場合「このままでいいよ」と言われるが、「熱々を食べていただきたいので」と伝えると、「ありがとう!」と大変喜ばれる(ラーメン屋でここまでする店は少ないだろう)。


ゆっくりと大きく成長したキャスト

アルバイトに応募してきた高校2年生の男子は、かなりおとなしそうなタイプだった。「神座は忙しいし、性格が強くて仕事に厳しい先輩キャストもいるけど、大丈夫?」と店長が聞くと「覚えるのは人より遅いですが、一生嘘命やります」と答えたので採用した。失敗することもあったけれど、いつも笑顔でお客様に接拶ができ、自分のべースでよく頑張って続けた。現在は大学生。とても大きく成長した。


忙しくても働いてくれるキャスト

この店では、大学受験のキャストでも、就話で忙しいキャストでも、たとえ短期間であっても週に1回はシフトに入ってくれる。神座では3カ月間勤務がないと、退職扱いとなるからだ。神座が好き、この店が大好きで、みんな辞めたくないのである。

キャストが卒業するときは「神出で働いてよかった!」とみんなが言ってくれる。「涙が出るほどうれしいです!」と鳥越店長は語る。



店舗運営で気を付けていること

神座では、社員・アルバイトの階級がチーフ(ネクタイ)の色によって分けられている。ブルーが新人、イエローが中堅(一般)、グリーンが時間帯責任者、オレンジが店長、レッドがマネージャーというように上がっていく。全5階級だ。これはスキルのランクを表すものなので、社員とアルバイトの区別はない。だからグリーンのアルバイトが、イエローの社員に指示を出すことができたりする。

そのようなスキルを重視するオベレーション体制の下で、鳥越店長はどんなことに気をつけながら店舗運営をしているのだろうか。


1.お客様をよく見て寄り添う

途中で席を外したお客様に対する気配りのように、お客様一人一人をよく見て寄り添うサービスを心掛ける。


2.安心・安全に気をつける

ラーメンは熱々なので、客席に座っているお客様に気を遣い、安全に気を配っていったん止まり、気をつけながら提供する。


3.スープの味は100%チェック

ラーメンスープは全て、(キッチンとデシャップで)2回味見して確認する。味へのこだわりをこれほど徹底させているラーメンチェーンも少ないだろう。

神座がいつもきれいなのは、毎日行うべき清掃箇所があって、それを徹底的に実践しているからだ。キャストみんなが常にそれを意識し、気付くようにして、手が空いたときにはすぐ清掃する。全員で「きれい」を徹底させている。

驚いたことに、週ごとに清掃する箇所は、毎回写真を撮って上長に送るという。例えばスープ用寸前は、中と外を清掃した後にそれを撮影して送る。エアコンやグレーチング(キッチンの側溝)も、決められた曜日にしっかり清掃・撮影して送る。この仕組みが神座のクリンリネスを徹底させているのだ。

最後に鳥越店長の目標を伺った。「お客様にホスピタリティを提供するラーメン屋さんになりたい。そして関束の神座全店がホスピタリティナンバー1になること、つまり全店がお客様に寄り添ったサービスのできる、最高のラーメンレストランになることを目標にしています」と、日を輝かせながら語ってくれた。お客様とキャストへの愛情あふれる実力店長であった。



◆店舗情報


店舗名/どうとんぼり神座アトレ川崎店
所在地/神奈川県川崎市川崎区駅前本町26-1アトレ川崎3F
TEL/044-201-1138
店舗面積/20坪
客席数/26席
営業時間/7:00~23:00
客単価/930円
平均月商/1,300万円
従業員数/正社員6人、PA21人




◆著者プロフィール
たなかしろう
(株)田中コンサルティング事務所代表。大手ファーストフードからステーキハウスまでの店長・SV・営業本部長を経て独立。雑誌「飲食店経営」25年常連執筆。「実力店長養成講座」(出張研修)は300社2万人実施。中国飲食経営者日本視察セミナーコーディネート実施。著書「店長の仕事」「実力店長はここが違う」(商業界)「売上5割減でも巻き返せる!これからの飲食店経営者・店長の教科書」(同友館)。田中コンサルティング事務所 ブログ累計25万人突破。

※こちらは「飲食店経営」 2024年12月号からの転載記事です